「そんな話、元気なうちはやめて」終活を嫌がる家族と向き合った日【インタビュー】


母が「終活を始めたい」と言った日

今回お話を伺ったのは、東京都在住のMさん(40代女性)。75歳になるお母さまが「終活を始めたい」と家族に切り出したときの出来事を教えていただきました。

Mさん:「きっかけはテレビの終活特集でした。母が“そろそろ準備をしておきたいの”って言い出したんです。
でも、そのとき妹が言ったんです。“そんな話、元気なうちはやめてよ”って。」

お母さまの表情はどうでしたか?

Mさん:「ちょっと笑ってたけど、正直ショックだったと思います。“迷惑かけたくないから”って言ってたのに、それすら受け入れてもらえなかった感じで…」


“元気なうちに話す”ことの難しさ

ご家族の間で、その後話し合いはされましたか?

Mさん:「すぐにはできなかったですね。妹は“縁起でもない”って思っていたみたいで…。母は“私がいなくなったときに困ると思ったから”って気にしていて。」

「終活」って、残される側より本人の方がよっぽど“相手のこと”を思ってやってるんだって、そのとき気づきました。


母から届いた“ノート”が変えた空気

そこから、どうやって気持ちの変化があったのでしょう?

Mさん:「数ヶ月後に、母から“私のことノート”っていう手書きのノートが送られてきたんです。
中には保険や通帳の場所、延命治療の希望、お墓のことまで全部書いてありました。」

最後のページには「今は元気だけど、元気な今しか準備できないから」と一言。

Mさん:「妹もそれを見て、“お母さんなりにすごく考えてくれてたんだね”って…ようやく受け入れられた感じでした。」


話せるうちに話す。それが家族への優しさ

今ではどのように向き合っていらっしゃいますか?

Mさん:「あれからは、母と一緒に写真の整理をしたり、施設の見学に付き添ったりしています。
妹とも“もしものとき”について話せるようになりました。」

「“終活=死の話”じゃなくて、“安心を作る話”なんだって、ようやく実感しています。
家族だからこそ、元気なうちにちゃんと話しておくことが、いちばんの思いやりなんだって。」


編集後記:すれ違いの奥にある“同じ気持ち”

“元気なうちはそんな話、やめてよ”という一言には、不安や拒絶だけでなく、「まだ一緒にいたい」という願いが込められていたのかもしれません。

けれど、終活は“終わりの準備”ではなく、“家族のための安心づくり”。

親子のすれ違いを乗り越えたMさんの言葉は、
これから誰かと向き合おうとする人の背中をそっと押してくれるはずです。